【ひっそりとプレオープン中】ベトナム ホーチミン市からローカルブランドのアイテムを直送
人類の記録とコミュニケーションの歴史において、紙は革新的な発明だった。
 
紀元前3,000年以上前のエジプトで生まれたパピルス、中国で使われていた木簡など様々な記録媒体が存在したが、現代に続く紙の製造方法が確立されたのは西暦105年頃の中国においてだった。

その後、シルクロードを通じて世界中に広まった紙の製法は、各地で独自の発展を遂げていく。日本では高度な技術と職人の技が結実した手漉きの「和紙」として、今日でも世界的な評価を得ている。


ベトナムにも約700年以上の歴史を持つ独自の手漉き紙文化がある。

特に『Dó Paper(ゾー・ペーパー)』と『Dướng Paper(ズオン・ペーパー)』は、その代表的な存在だ。これらの紙は、伝統的な製法により、地域特有の原料から作られている。
 

ベトナム・ハノイ市を中心に展開する『Zó Project』は、伝統的な手漉き紙『Dó Paper』と『Dướng Paper』を活かし、雑貨やアクセサリー、インテリアグッズを生み出すブランドだ。

『Zó Project』のファウンダーであるTran Hong Nhung(チャン・ホン・ニュン、以下ニュン)は、失われつつある伝統技術の継承、少数民族の人々の経済的自立支援、そして環境に配慮した持続可能なビジネスの実現を目指し、このプロジェクトを立ち上げた。

その取り組みの一つが、ハノイ市から約80km西に位置するHoa Binh省の山間部に住むDao Thien(ザオ・ティエン)族の人々との協働だ。ニュンは彼らと共に、伝統的な紙製造技術の継承と生産方法の改善に取り組み、村の新たな収益源として紙づくりを確立している。
 
 
 
Dao Thien族は12世紀頃から中国南西部からベトナムへと移住し始めた民族で、古くから伝統的な紙製造の技術を持ち、今でも部族の文字として漢字を用いている。
 
2017年、ニュンが初めてこの村を訪れた際、電気もWifiも通っていない環境だったが、ホームステイ先で目にした漢字の書や、和紙の原料として知られる楮(こうぞ)の自生、さらには火を起こすための紙製造技術が残っていたことから、村の人々との協働が始まった。
 
 

『Zó Project』は、このような伝統的な手法に現代的なアプローチを組み合わせ、印刷やペーパークラフトに適した高品質な紙づくりを実現している。

ほかにも、Muong(ムオン)族やNung(ヌン)族など、ベトナム北部の様々な少数民族が生産パートナーとなっている。
 

 
村々を訪れると、人々は皆、ニュンを長年の友人や親戚のように温かく迎え入れる。
道行く人々が彼女を見つけては声をかけ、ハグを交わし、年に数回の再会を心から喜ぶ姿が印象的だ。

村の人々は快くニュンを家屋に招き入れ、お茶をだし、互いの近況を語り合う。

政府からの補助で村から遠く離れた高校に通う高校生の娘の進路を親戚のように親身になって提案する。
村の人々は彼女を見送る際、持ちきれないほどの村で生産された農産物のお土産を渡す。
 

少数民族との関わりについて、メディアの注目や補助金目当ての形だけの取り組みも少なくない中、『Zó Project』は違う。彼らに寄り添い、新たな収入源を創出することで、相互の信頼関係を築いてきた。

このような堅実な信頼関係を通して生産される、彼らの村で生み出された手漉きの紙は『Zó Project』の現代的なクリエイティビティのフィルターを通り、あらたなペーパークラフトグッズとしてハノイ市を中心とした土産物店に並び、購入者に少数民族の人々と『Zó Project』が歩んできたストーリーを伝播する。

もっとも伝統的で作られた紙に新たなクリエイティビティを乗算させ、未来の価値を生み出す『Zó Project』。

グローバルブランドの高品質な紙でできたノートや紙製品は世界のどこにいても手に入るだろう。しかし、『Zó Project』のアイテムは、長年のコミュニケーションをかさねて創り上げてきたストーリーとぬくもりをもつ、唯一無二の価値を持った製品だ。
 

ポストカード、アクセサリー、ノートブック、スケッチブックなどのステーショナリー、Dóペーパーで作られるイヤリング、壁紙やランプシェードといったインテリアアイテムまで、その製品は多岐にわたる。

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