ベトナムの“今”を現地から 提携ブランドの最新アイテムをダイレクトにお届けします

ベトナムの社会課題に対し、ものづくりや独自の仕組みで解決に取り組むブランドをセレクトし、その取り組みやアイテムを紹介いたします。

ベトナム北部の高地に広がる麻畑。そこから始まった一つの出会いが、ひとつのブランドを生み出しました。それが、Hemp Oi(ヘンプ・オイ)。今や単なるファッションブランドではなく、「Hemp Journey(ヘンプ・ジャーニー)」という社会的なムーブメントを起こしています。

Hemp Oiでは、ヘンプ素材を中心に、ワンピースやジャケット、アオザイなどのウェア、バッグ、小物類まで幅広く展開。日常で着られるシンプルなデザインから、伝統衣装を再解釈したコレクションまで、製品ラインは多彩です。どの商品にも共通しているのは、「長く使えること」。流行のためではなく、人生に寄り添う一着であることを大切にしています。

今回は、ブランドオーナーのPhuong Thao Tran(トラン・フオン・タオ)さんに、設立の背景にある物語、込められた想い、そして伝統と現代を融合させるデザイン哲学について伺いました。

 

モン族とヘンプについて

■ モン族(H’Mong)ベトナム北部の山岳地帯(ハザン、ラオカイ、カオバンなど)に多く暮らす少数民族です。厳しい自然環境の中で農耕や手工芸を中心に生活してきました。特に織物文化が発達しており、女性たちは幼い頃から刺繍や布づくりを学びます。伝統衣装は民族の誇りを象徴するものであり、布づくりは生活と文化の両方を支える大切な営みです。

■ベトナム伝統の麻(ヘンプ) 環境負荷が少なく、丈夫で通気性に優れた天然素材です。農薬をほとんど必要とせず、持続可能な植物として世界的にも注目されています。見た目は素朴ですが、軽やかで長く使える機能性を持ち、衣服だけでなく生活用品にも幅広く活用されてきました。

■モン族とヘンプの関係性 モン族にとってヘンプは、単なる原材料ではありません。
祖先と自分たちをつなぐ“魂の糸”ともいわれる存在です。麻の栽培から収穫、繊維を取り出して糸を績み、手織り機で布を織り、石でなめして仕上げるまで、すべてが手作業。自然のリズムに寄り添いながら行われる工程には、何世代にもわたる知恵と精神性が宿っています。ヘンプを織ることは、生活を支える手段であると同時に、文化を受け継ぐ行為でもあります。

 

“生きる理由”になった、ひとつの出会い

Fav! 編集部(以下、F): よろしくお願いします。それでは、まず、どのような経緯で「Hemp Oi」を立ち上げたのか教えてください。

タオ:きっかけは、私が北部高地を旅していたとき、14歳のモン族の少女と出会ったことでした。この出会いが、すべての始まりだったんです。

彼女は家族を支えるために学校を辞めて働いていました。でも、少しずつ関係を深めていく中で、ふと彼女がこぼしたんです。「学校に行きたい。世界を見てみたい」って。その言葉が、ずっと心に残っていて。

モン族の家庭では、代々ヘンプ織りの伝統が受け継がれているんです。子どもたちは学校に通わないことも多くて、小さい頃から家計を助けるために家業の織物に携わります。だから、生まれた土地でそのまま一生を過ごす人も少なくありません。もちろん、それは誇りある文化だし、大切に守るべき遺産でもあるんですけどね。

F:なるほど…。山間部ではよくあるお話ですが、何が彼女たちにとっての幸せなのか、私たち外の人間には簡単に答えが出せない部分でもありますよね。

タオ:はい。ただ、彼らが生み出す素材そのものに目を向けると、ヘンプは環境に優しく持続可能で、ヘンプ織りは非常に高度な手仕事でもあるんです。その価値の高さを知れば知るほど、「この伝統は守られるべきものだ」と強く感じました。

でも同時に、こうも思ったんです。彼女たちにとってヘンプを織ることが“唯一の道”ではなく、“この技術を守りながら、彼女たちの未来を広げていけないだろうか”って。

その想いが、Hemp Oiを立ち上げる原動力になりました。
Hemp Oiは、私にとって“生きる理由”なんです。

 

再生可能な未来のために

F:ブランドのスローガン「For A Regenerative Future(再生可能な未来のために)」には、どんな意味が込められているんですか?

タオ:私たちが考える“再生可能なファッション”は、単に環境負荷を減らすことではないんです。

地球を愛と責任のまなざしで見つめること、文化の魂を宿した製品を生み出すこと、そしてコミュニティが誇りを持って未来を選べる社会をつくること

モン族の人々が、伝統を守るだけでなく、自分たちが生み出した製品を世の中に届けて、その対価を正しく受け取ること。そして、その利益で子どもを学校へ通わせる(=教育に投資する)という選択ができる環境を整えること。その結果、自分たちの文化や仕事に誇りを持てるようになること。

それは、一時的な支援や寄付ではなく、“続いていく仕組み”をつくることに重きを置いています。

選ばれる一着を作ることが、遠く離れた村の未来につながる。私はそれを信じています。



モン族の手仕事が持つ、静かな力とデザインのこだわり

F:モン族のヘンプ織りの魅力って、どんなところにありますか?

タオ:ヘンプ織りは、単なる技術ではないんです。精神的な文化そのものだと思っています。 栽培から糸づくり、手織りまで、すべてが自然と人の調和の中で行われていて。私たちはそのエネルギーを損なわないように、地球に不要な負荷をかける方法は採用していません。

丁寧に、静かに、誠実に。 その姿勢は、日本の“ものづくり”とも、どこか共鳴している気がしています。

F:デザインで最も大切にしていることは何でしょうか?

タオ:バランスですね。伝統は尊重し、現代がそれを補完する。 たとえば、伝統衣装を再解釈した「Annamensis Áo Dài」や、都会的な「Camellia Collection」。

どちらも、文化の深みを残しながら、現代の生活に溶け込む実用性を大切にしています。

派手さではなく、凛とした存在感。ナチュラルでありながら、芯がある。 特に女性が「自分らしさ」を大切にしながら選べる服を目指しています。

F:なるほど、タオさんが考えるモン族の方々が生産するヘンプの魅力を教えてください。

タオ:ヘンプはとても丈夫で、通気性も良くて、使うほどに柔らかくなっていくんです。それでいて、形は崩れにくい。 最初は少し素朴に見えるかもしれません。でも、着るほどに身体になじんで、自分だけの一着に育っていく。

強さの中に、やさしさがある。 それは、年齢を重ねる女性の魅力にも、どこか似ていると思うんです。

 

メッセージ

F:最後に、日本の読者へメッセージをお願いします。

タオ:日本には、生きがい、侘び寂び、森林浴、改善、調和ーー自然とともに生きる哲学が、たくさんありますよね。 私たちは、同じ道を歩いているんだと思っています。

あなたが今ここで、この文章を読んでくださっていること。 それ自体が、「愛を行動に移す」最初の一歩なんです。

日々の装いを、ほんの少しだけ意識して選んでみる。 それは、未来への小さな投票だと思います。

閲覧したアイテム