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ベトナムの社会課題に対し、ものづくりや独自の仕組みで解決に取り組むブランドをセレクトし、その取り組みやアイテムを紹介いたします。

今回は、ベトナム・ハノイ市のミーチートゥオン(Mễ Trì Thượng)にある『Hoa Tien Brocade(ホアティエン・ブロケード)』の工房にお邪魔しました。

代表を務めるタム・ティ・ティンさんにインタビューを実施。

故郷であるゲアン省ホアティエン村で100年以上受け継がれる「タイ・ヨー族」の伝統技術と、村の女性たちの自立を支える協同組合の活動、そして自然素材にこだわったものづくりについて、お伺いしました。

 

ゲアン省と「ホアティエン村」について

■ ホー・チ・ミン主席の故郷、ゲアン省 ベトナム中北部に位置する「ゲアン省(Nghệ An)」は、ベトナムで最も広い面積を持つ省です。 建国の父、ホー・チ・ミン主席の故郷としても有名ですが、西側には雄大なアンナン山脈が走り、ラオスと国境を接しています。夏には「ラオスの風」と呼ばれる乾燥した熱風が吹く厳しい気候のため、この土地の人々は非常に勤勉で忍耐強い気質であると言われています。

■ 山間の織物の里、ホアティエン村 そのゲアン省の西部、深い山々に抱かれたクイチャウ(Quỳ Châu)郡にあるのが「ホアティエン村(Bản Hoa Tiến)」です。 都会の喧騒から遠く離れたこの静かな谷間の集落は、タイ・ヨー族(タイ族の一派)が暮らす伝統的な村。

ここは単なる農村ではありません。100年以上前から「織物の聖地(Cradle of Brocade)」として知られ、村の女性たちは桑を育て、蚕を飼い、森の植物で糸を染め上げます。村全体がひとつの大きな「天然染色の工房」であり、美しい手仕事が日常の風景として息づいている場所です。

 

タイ・ヨー族のアイデンティティと、母から受け継いだ手仕事

Fav! 編集部(以下、F):こんちは。まずは、ご自身のルーツと、ホアティエン村について教えてください。

ティン:こんにちは、タム・ティ・ティンです。私はゲアン省クイチャウ県にあるホアティエン村で生まれ育ちました。私たちは「タイ・ヨー族(Tay Dọ)」という、タイ族の一派です。

実は、私たちタイ・ヨー族の文化は、よく知られているベトナム北西部のタイ族とは少し異なります。特に衣装や織物(ブロケード)において、私たちの色使いはより多様で豊かである傾向があります。家の周りにある植物や草花、動物などをモチーフにして、織物の模様として刺繍するのが特徴ですね。

F幼い頃から織物に触れてこられたのですか?

ティン:はい。貧しい田舎で生まれ育った私たちタイ族の女性にとって、手仕事は生活の一部でした。7〜8歳になると、両親や祖母、姉たちから伝統的な刺繍、織り、染めの方法を教わります。

自分の着るスカートや上着、ピエウ(スカーフ)は自分で刺繍しなければなりませんし、成長すれば、夫の家族への贈り物として蚊帳の縁飾りや布団、枕などを織るようになります。つまり、私たちタイ族の娘にとって、刺繍や織り、染色ができることは必須のスキルなのです。

現在は「ホアティエン織物工芸協同組合」で販売を担当し、村の人々が作った製品を市場に届ける手助けをしています。

 

「ホアティエン・ブロケード」に込めた想いとこだわり

Fブランド名に村の名前を入れた理由をお聞かせください。

ティン:「ホアティエン」は私の村の名前であり、ゲアン省におけるタイ族の伝統工芸の発祥地でもあります。

この名前を付けたのは、村の人々自身の手で作り上げた美しい織物であることを、お客様に伝えたかったからです。「私たちが自らの手で作ったものを、直接お届けするのだ」という誇りが込められています。

F具体的にどのような製品を作られているのでしょうか?

ティン:スカーフ、バッグ、財布などのファッション小物が中心ですが、最近はインテリア製品にも力を入れています。枕、タペストリー、テーブルクロスのほか、カーテンやランプシェード用の布地も提供しています。

F素材や製法についてのこだわりを教えてください。

ティン:私たちは、環境に優しく、人体に無害な製品づくりを目指しています。

素材は主に綿(コットン)と絹(シルク)の2つですが、これらはすべて地元で調達しています。自分たちで桑を育てて蚕を飼い、綿を栽培し、綿繰りから糸にするまでを行っています。

色についても同様です。森の植物や自分の庭で育てた木の葉、根、塊茎、果実など、すべて天然由来のもので染色しています。

 

困難を乗り越えた「ある夏の日のワークショップ」

Fブランドを立ち上げてから、苦労されたことも多かったのではないでしょうか?

ティン:それはもう、とても困難の連続でした(笑)。

2015年に活動を本格化させた当初は、製品開発や言葉の壁に加え、ITの知識も全くありませんでした。どうすれば市場を広げられるか分からず、堂々巡りの状態が続きました。

しかし、若い世代と交流し、Eコマースを活用し始めたことで、少しずつ道が開けてきました。今では国内外の観光客に名前を知っていただけるようになっています。

F特に印象に残っている出来事はありますか?

ティン:2015年7月、ハノイで開催した「最初のワークショップ」のことが忘れられません。

ハノイの夏は本当に暑いのですが、多くのお客様が情熱を持って参加してくれました。

実は当初、「織りや刺繍なんて簡単だろう」と考えていたお客様もいたんです。でも、実際に体験してみると、村の人々が普段作っている製品がいかに高度で難しい技術で作られているかを知り、驚かれていました。

その日、お客様が私たちの織物の美しさを心から愛してくれているのを感じ、「この道でやっていこう」と強く思えました。

 

伝統を「復元」し、次世代へつなぐ

F最近は、失われた技術の復元にも取り組んでいるそうですね。

ティン:はい。ブリティッシュ・カウンシル(英国文化振興会)のプロジェクトに参加し、「タム・フック・マン」という、かつて70〜80年代に流行した蚊帳(マン)を織る技術を復元しました。

技術的に難しく、一度は廃れてしまったものですが、このプロジェクトを通じて模様と技術を蘇らせることができました。

また、2024年末からはRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)と共に、伝統的な模様の意味を記録・保存して本にするプロジェクトも進めています。村の年長者たちから物語を聞き取り、正確な意味を後の世代に残すためです。

F最後に、今後の展望と日本の皆様へのメッセージをお願いします。

ティン:私たちは現在、ハノイのミーチートゥオン(Mễ Trì Thượng)に店舗を構え、ホイアンやホーチミン、そして海外へも販路を広げています。

特に日本のような品質に厳しい市場のお客様に、私たちの製品を使っていただけることは、大きな喜びであり光栄です。

今、私たちは若い世代への技術継承に力を入れています。ハノイに住むホアティエン出身の若者たちが、伝統を受け継ぎ始めています。

私たちの製品には、タイ・ヨー族の独自の物語と、自然への敬意が込められています。日本の皆様にも、ぜひホアティエンの手仕事を心を開いて歓迎していただければと願っています。


ホアティエン・ブロケード アイテム一覧

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