MONIQ Studioは、アジアの伝統衣装と素材に深く根ざしたファッションブランドだ。ベトナム・ハノイで生まれ、職人の手仕事と芸術的な感覚を大切にしながら、東洋(オリエンタル)のスタイルを現代の日常に溶け込ませることを追求している。

始まりは、一人の問いから
創業者でデザイナーのトゥー・マドレーヌは、ロンドン・カレッジ・オブ・デザイン・アンド・ファッション(ハノイ校・LCDF)でファッションデザインとビジネスを学んだ。MONIQ Studioを立ち上げたのは2009年、彼女がまだ大学生だった頃のこと。最初は友人たちとともに、ハノイでのオンライン販売からのスタートだった。

自らデザインを描き、地元の仕立屋に依頼して、ごく少ない数量から生産を始める。その時に出会った最初の仕立屋は、今日まで彼女と共に歩み続けている。デザインという一つの側面にとどまらず、顧客と直接向き合い、ファッションをめぐるビジネスのすべてを自分の目で確かめながら手がけたい——その思いが、創業の原動力となった。
なぜ、東洋の服を毎日着ないのか
「なぜ私たちは毎日西洋の服を着るのに、東洋の伝統的な服を日常的に着ないのだろう?」
この素朴な問いが、MONIQ Studioのコアバリューの出発点だ。それぞれの国には独自の伝統衣装がある。日本には着物、ベトナムにはアオザイ。トゥーは大学の研究課題として着物や帯の言葉や文化を深くリサーチし、そこから着想を得てきた。


アジアの伝統的な服を、モダンな方法で毎日まとえるスタイルとして提案すること。その実現に向けて、今も試行錯誤を重ねながら歩み続けている。
デザインの美意識
MONIQ Studioが扱うのは、シルクやブロケード(錦織)といったアジアならではの素材だ。ストリングトップスやシルクのパンツ、そして羽織や着物からインスピレーションを得たシルクのジャケットなど、いずれも引き算を効かせたとてもシンプルなデザインへとアレンジされている。




ブランドタグには「東洋から(From the Orient)」という言葉が添えられている。職人の技術、芸術的な感覚、そしてオリエンタルなスタイル。この三つが、Moniqのものづくりの核を成している。
家族のように働く、小さなアトリエ
現在のチームは、トゥーを含めて約5人。グラフィックデザイナー、セールス・マーケティング担当、そして2人の仕立屋という顔ぶれだ。生産はハノイのごく身近な場所で行われている。仕立屋の一人はトゥーの叔父の妻であり、もう一人は2009年の創業時から14年にわたって共に働き続けてきた。一種の家族ビジネスのような、温かな環境のなかでものづくりが営まれている。

トゥーにとって、ブランドを続ける一番のモチベーションは「情熱」だ。仲間とコラボレートしてアイデアを分かち合えること、そしてビジネスとして収入を生み、共に働くスタッフたちの暮らしを支えられること。それらすべてが、彼女を前へと進ませている。
ハノイの街に息づくインスピレーションとお店
実店舗は、ハノイの中心部にありながらも、どこかローカルな空気の流れる場所に佇んでいる。ホアンキエム湖から1.5キロほど、ビンコムセンターというベトナムでメジャーなショッピングモールの近く。観光客でにぎわう旧市街の喧騒からは少しだけ距離を置き、地元の人々の日常がそのまま続いているような通りに、MONIQ Studioはある。

きらびやかなショッピングモールと、昔ながらの路地。その境目のような場所に身を置くことは、MONIQ Studioのものづくりそのものを映しているのかもしれない。伝統と現代、東洋と西洋、その「あいだ」を行き来しながら、心地よい一点を探し続ける——店の立地は、ブランドの姿勢を静かに物語っている。

トゥーにとって、この街は単なる拠点ではなく、インスピレーションの源でもある。休日には公園を散歩し、スポーツや読書で心をほぐす。ポップス、ハウス、アフロハウス、ヒップホップ——ジャンルを問わず音楽を愛し、いつかDJになるための勉強をしてみたいという夢も抱いている。そうした感性が、シンプルでありながらどこかリズムを感じさせるデザインへと還元されていく。
街を歩けば、お気に入りの場所がいくつもある。クラフトビールの店や、ハイバーチュン(Hai Ba Trung)エリアに延びるローカルなハノイビールのストリート。素敵な店や各国のレストランが集まるタイホ(Tay Ho)エリア。
なかでも日本をテーマにしたビアバー「Ton Kien Express」は、お気に入りの一つだ。「Ton Kien」はかつてのハノイの呼び名であると同時に、「東京(Tokyo)」の意味も重ねられている。東洋の都市と都市が、一つの名前のなかで静かに響き合う——その遊び心は、まさにMoniqが大切にしてきた感覚と地続きだ。
土地の暮らしと地続きの場所で、その日その日の出会いを重ねながら、MONIQ Studioの服は一着ずつ手渡されていく。ハノイという街の温度を、そのまま纏うように。
MONIQ Studioが描くこれから
伝統を受け継ぎながら、現代の暮らしに自然と溶け込むMONIQ Studioの服。そこには、創業当初から変わらない作り手の誠実な手仕事と、アジアの文化への敬意がある。
東洋の装いを、特別な日のものではなく、毎日のものへ。MONIQ Studioはこれからも、ハノイの小さなアトリエから、静かに、しかし確かに、新しいスタイルを提案し続けていく。

